2009年10月07日

The BachPhone

ちょうど一年くらい前、the BachPodという記事を書きました。これはiPod Classic 120GB(現バージョンは160GB)にバッハの全曲が入っているという商品で、これに私の音源コレクションを追加して常に持ち歩いていました。

それが、今年の7月には巷で人気の iPhone 3GS を購入してしまいました。容量は32GBと、iPod Classicの120GBにはおよびませんが、もともとBachPodに入っていた全集分や主要なコレクションは格納できます。ということで、iPod機能はiPhoneに一本化することにしました。

さらにパワーアップしたのは、私が持っている楽譜コレクションのうち、PDFファイルになっているものをiPhoneに入れたことです。もちろんバッハの主要な作品(旧バッハ全集)はすべてあります。これらをGood Readerというアプリを使って閲覧します(サイズが大きいPDFでもストレス無くスムーズに見れます)。下の画面は、今日帰りの通勤電車の中で楽譜を見ながらシャコンヌを聴いているときのiPhoneの画面です。

Sheet music on my iPhone

もちろん全画面表示にすればもっと広くきれいに見れます。音楽を聴きながらでなければ、譜読みもできると思います。今度から、このホームページで紹介する譜例はこのiPhoneの画面キャプチャを使った方が早いかも知れません。

これでいつでもどこでも、バッハの楽譜を見ながらバッハの音楽を聴くということができるようになりました。かくして、私のiPhoneは「BachPhone」となったわけです。(電話としては使ってません)

2009年10月06日

Schanz: Bach in der Klaviertranskription

もう一年くらい前の話ですが、アルトゥール・シャンツ博士(Dr. Arthur Schanz)が書いた「J. S. Bach in der Klaviertranskription」という本を購入しました。私にとって大変面白く、意義深い本だったので紹介したいと思います。
Schanz: J. S. Bach in der Klaviertranskription
タイトルの通り、バッハのピアノ編曲についての本で、ドイツ語ですが、700ページにわたってジャンル別に解説・比較考察が述べられています。2000年のバッハ・イヤーに出版されたようです。BWV番号別の一覧、編曲者別の索引、譜例を交えた解説、などなど、まさに私がこのホームページでこつこつと編曲の紹介を書き溜めてきて、最終的に目指していたひとつの完成形がそこにありました。またその網羅度も相当高く、私がコレクションで持っているものはもちろん、存在は知っていたものの見たことが無かったような稀少なものも譜例付きで紹介されていました。ピアノソロ編曲、4手連弾、2台ピアノ、なども網羅。録音については述べられていませんでした。

私から見て唯一の難点は、全てドイツ語で書かれていること。そこでドイツ語が得意な音楽仲間のY氏の協力を得て、少しずつその内容を読み進めてきました。内容がわかってくると、同じ意見だったり若干違った意見だったりが見えて、ますます面白いです。協力ありがとうございます!

私の研究(収集)結果も、次のバッハ・イヤー(2035年か?!)までくらいの長いスパンの目標で、それが本になるのか、WikipediaIMSLPの一部になるのか、どうかはまだまだわかりませんが、できれば日本語と英語の両方で世に残したいと思っています。

2009年09月27日

バッハを弾くラローチャ

久しぶりの更新になってしまいました。スペインの長老ピアニスト、アリシア・デ・ラローチャがつい先日、2009年9月25日に亡くなったという訃報にふれました。ラローチャといえば、アルベニスやグラナドス、ファリャ、モンポウなどのスペイン音楽の名手ですが、バッハについても僅かですが素晴らしい録音を残してくれていますので、紹介したいと思います。
私が持っているCDには、以下の曲目が収録されています。オリジナル曲も編曲も、バッハを得意とするピアニストに引けを取らず、とても良い演奏です。


バッハ/イタリア協奏曲ヘ長調 BWV 971
バッハ/フランス組曲第6番ホ長調 BWV 817
バッハ/幻想曲ハ短調 BWV 906
バッハ/イギリス組曲第2番イ短調 BWV 807
バッハ=コーエン/最愛のイエス,われらここにあり BWV 731
バッハ=コーエン/汝の慈愛によりてわれらを死なしめたまえBWV 22
バッハ=ブゾーニ/シャコンヌ BWV 1004

と思ってアマゾンやHMVを検索したところ、現在は若干入手困難になっているようです。以下のアマゾンのリンクは、バッハの録音が収録されている別のCDです。

これ以外にもバッハの録音は残されているのでしょうか?ご存知の方、教えてください。

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2009年07月24日

カツァリス、サイの編曲譜到着

Schott社から新たに出版された二つの楽譜が届きました。シプリアン・カツァリス編曲のバディヌリーと、ファジル・サイ編曲の幻想曲とフーガ ト短調 BWV542です。

カツァリスのバディヌリー以前CD紹介したもので、リストの「超絶技巧」トランスクリプションの世界を彷彿させるアクロバティックな編曲です。
Bach=Katsaris/ Badinerie
(Bach=Katsaris/ Badinerie)

サイ編曲の幻想曲とフーガ ト短調 BWV542は、昨年の冬に演奏会で聴いた曲です。この楽譜には、強弱・緩急・細かい表現まで指定されています。

Bach=Say/ Fantasy and fugue g-moll BWV 542
(Bach=Say/ Fantasy and fugue g-moll BWV 542)

Schott社なので日本でも買えるようになると思いますが、di-arezzoでのリンクを書いておきます。

カツァリス編曲 バディヌリー
 →http://www.di-arezzo.jp/detail_notice.php?no_article=SCHOM03562

サイ編曲 幻想曲とフーガ ト短調 BWV542
 →http://www.di-arezzo.jp/detail_notice.php?no_article=SCHOM00720


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2009年07月01日

Groschopp plays Busoni Transcriptions

先月、ブゾーニのピアノ編曲を集めた4枚組みのCD、「Groschopp plays Busoni Transcriptions」を入手しました。ピアニストはホルガー・グロショップ(Holger Groschopp)。過去に同レーベルからブゾーニ編曲集として1枚ずつリリースしてきたもので、最近になってVol.4まで揃ったためBOX化されたようです。

バッハをはじめモーツアルトやベートーヴェン、リスト等のブゾーニ編が収録されていますが、バッハの編曲モノの中でも有名曲に埋もれた、非常に珍しい曲目(おそらく世界初録音)がありましたのでここで紹介します。

以前blogで取り上げたブゾーニ版バッハ集のCDで書いたように、ブゾーニ版のバッハ平均律集は、バッハの音楽を学ぶための様々な練習用の変奏が掲載されていますが、このCDにはテクニック強化に特化した二つの変奏(練習曲)が収録されていました。まずは平均律第1巻、嬰ハ長調の前奏曲を元にした練習曲。

Bach=Busoni/ Etude [Technical Variants of Prelude No.3]
(Bach=Busoni/ Etude [Technical Variants of Prelude No.3])

もう一つは、平均律第1巻、変ロ長調の前奏曲を元にした練習曲です。

Bach=Busoni/ Etude [Technical Variants of Prelude No.21]
(Bach=Busoni/ Etude [Technical Variants of Prelude No.21])

その他でも、対位法的幻想曲聖アンの前奏曲とフーガでは現在流通しているバージョンとは違った、初稿譜をもとに演奏しているとのことで、興味深い内容です。

以上付録的な要素ばかりを紹介してきましたが、ブゾーニのピアノ編曲を総括的に網羅しているこのBOXは、ピアノ音楽愛好家にとって聴く価値のあるものだと思います。


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2009年06月15日

無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番(全曲)のピアノ編曲版

先週末店頭にて、全音から出版された無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番(全曲)のピアノ編曲楽譜を購入しました。出版日を見ると、2009年6月15日。先日blogで紹介した菊地裕介氏のCD「変貌するバッハ」に収録されていた曲で、あの有名なブゾーニ編のシャコンヌを終曲とする組曲全体(アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ)を菊池氏がピアノソロ用に編曲したものです。適度に挿入された対旋律が、ピアノで弾く豊かさを増しています。解説も充実しており、編曲にあたっての姿勢・考え方が論理的に書かれていました。共感するとともに、あまりに的確な表現だと感じましたので、そのままの文章を引用させてください。

全曲を通すことによってしか迫れない「何か」を求めた結果である。 ・・・・
ヴァイオリンによる演奏をピアノによって模倣しようとしたのではない、という筆者のスタンスを強調しておきたい。ピアノという楽器の特徴を活かし、的確で簡潔なイントネーションによって、「音符」によって象徴される幾何学的な美学をより一層浮き彫りにし、ヴァイオリンでの演奏とはまた異なる楽曲の魅力を追求したい。

さらに、ブゾーニ編のシャコンヌにも数多くの校訂報告がなされています。今後シャコンヌを勉強する人々にとっても、有意義な指南となることでしょう。私はまだシャコンヌには挑戦していませんが、その際にはぜひこの楽譜も参考にしたいと思います。何にせよ楽譜全体を通して、非常に密度の濃い素晴らしい内容、価値のある一冊だと思いました。


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2009年05月20日

hyperionバッハ編曲集 第7弾

ピアノ・トランスクリプションズ第7集~レーガー編曲全集 ベッカー(2CD) 前回予告編を書きましたが、マックス・レーガー(Max Reger, 1873-1916) の編曲集、「ピアノ・トランスクリプションズ第7集~レーガー編曲全集」が先週手元に届きました。このジャケットのリンクはHMV Onlineのものですが、Amazonではまだ6/9発売予定になっているようです。ピアニストはマルクス・ベッカー(Markus Becker)。CD2枚組で、それぞれ先頭と末尾に前奏曲(トッカータ)とフーガの大曲を、間にオルガンコラール小品をはさみ、大変充実した内容です。この前奏曲(トッカータ)とフーガのシリーズは、ほとんどブゾーニの編曲と重複していますが、同時代に生きながらその解釈の違いを垣間見ることができます。その違いをざっと挙げると、高音域の使い方、トリルやスケールへの細かい音の詰め込み、音の密集度などでしょうか。どうしてもブゾーニの有名な編曲が先に頭に入っているので、公平に評価できないです。

ブゾーニ編と重ならない曲としては、原曲も大変な難曲である、前奏曲とフーガ ホ短調 BWV548があります。これは他にはリストフェインベルグによる編曲が残されていますが、どちらよりもずっと重厚に仕上がっています。この編曲には数多くの追加された音がありますが、原曲を「オルガンソロによる交響曲」と言わしめたこの曲、オルガニストであったレーガー自身はどのように弾いたのかを伝えているのではないでしょうか。

それにしても、hyperionのシリーズは良い企画をリリースしてくれるものです。次は一体何を出してくれるか、とても楽しみです。

CD2枚の各巻収録曲は以下の通りです。

(CD No.1)
Prelude and Fugue in D major, BWV532
O Mensch, bewein' dein' Sunde gross, BWV622
Durch Adams Fall ist ganz verderbt, BWV637
Ach wie nichtig, ach wie fluchtig, BWV644
Nun danket alle Gott, BWV657
Herzlich tut mich verlangen, BWV727
Wenn wir in hochsten Noten sein 'Vor deinen Thron tret ich', BWV668
Valet will ich dir geben, BWV736
Es ist das Heil uns kommen her, BWV638
Liebster Jesu, wir sind hier, BWV730
Vom Himmel hoch, da komm ich her, BWV606
Prelude and Fugue in E flat major 'St Anne', BWV552

(CD No.2)
Prelude and Fugue in E minor 'The wedge', BWV548
Christ lag in Todesbanden, BWV Anh 171
Ich ruf' zu dir, Herr Jesu Christ, BWV639
An Wasserflussen Babylon, BWV653b
Komm, heiliger Geist Herre Gott, BWV651
Schmucke dich, o liebe Seele, BWV654
Das alte Jahr vergangen ist, BWV614
Toccata and Fugue in D minor, BWV565

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2009年05月06日

「熱狂の日」音楽祭(LFJ 2009)

ここ数年、ゴールデンウィークの音楽祭として定着してきた、「熱狂の日」音楽祭(ラ・フォル・ジュルネ)。今年のテーマは「バッハとヨーロッパ」ということで、私もいくつかの公演・イベントを聴きに行きました。チケットは発売直後あっという間に完売してしまうような勢いで、私も発売日の10:00~10:12の間にかろうじて確保できた4公演。もっといろいろな楽器の演奏を聴きたかったのですが、結果的にピアノ関連ばかりになってしまいました。私が回った公演を客観的に見てみると、何と偏った選択をしているかが浮き彫りになってます。何にせよ、忘れないうちに感想を書いておこうと思います。

<4月28日(火)18:00~18:30>
0.イベント(無料公演)

 丸ビル1階の「マルキューブ」で、藤武靖子さんのオルガン演奏を聴きました。演奏前に解説があって、わかりやすかったです。なかなか良い幕開けとなりました。曲目は、以下の通り。
 ・小フーガ ト短調 BWV 578
 ・コラール「おお人よ、汝の大いなる罪に泣け」 BWV 622
 ・パッサカリア ハ短調 BWV 582
丸キューブ 2009年4月28日

<5月4日(月)>
1.214@ホールA 17:15~18:00

 ピアノが2台、3台が並ぶステージ。5000名も入る大ホールで、運よくS席で聴けたので良かったものの、想像するに遠い席だとほとんど生演奏の臨場感は得られないのではないでしょうか。2台ピアノの演目は児玉麻里さん・桃さんの姉妹、そして3台ピアノは小曽根真さんが第1ピアノに入りました。小曽根さんはジャズ・ピアニストで、期待通り面白い即興を交えた演奏を聴かせてくれました。第2楽章はかなり長めの即興ソロを挿入し、会場からの興味を十分に引いていたと思います。この即興の良さは、あざといジャズアレンジとは違って、「あたかも原曲にありそう」な演奏だということです。
 ・2台ピアノのための協奏曲 ハ短調 BWV 1060
 ・2台ピアノのための協奏曲 ハ長調 BWV 1061
 ・3台ピアノのための協奏曲 ニ短調 BWV 1063

2.277@G409 19:15~20:00
 ジャン=フレデリック・ヌーブルジェのピアノソロ演奏会。バッハのピアノ編曲モノのオンパレードで、まさに私が好むプログラム。上記ホールAとはうって変わって、小さめの会議室で音響がほとんど無い場所での演奏。演奏者の意図がダイレクトに伝わってきました。場所のせいか、強い音がやや耳につく感じが否めいのですが、丁寧な演奏だったと思います。曲目は以下の通り。
 ・ブクステフーデ=プロコフィエフ:前奏曲とフーガ 二短調 BuxWV140
 ・バッハ=ブゾーニ/コラール「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」 BWV 659
 ・バッハ=ブゾーニ/コラール「今ぞ喜べ、愛するキリスト者の仲間たちよ」 BWV 734
 ・バッハ=ブラームス/シャコンヌ(左手のための)
 ・バッハ=フェインベルグ/トリオソナタ BWV 529 より「ラルゴ」イ短調
 ・バッハ=ヌーブルジェ/ミサ曲 ロ短調 BWV 232 より「キリエ・エレイソン」

<5月5日(火)>
3.377@G409 19:45~20:30

 前日に引き続き、小さい会議室でのピアノソロ演奏会。ピアニストはクレール・デゼール。バッハの「フーガの技法」を最初と最後に配置し、中間にバッハから影響を受けた作品をはさむというプログラム構成で曲目は以下の通りですが、ダッラピッコラとシューマンの演目については、バッハとの関わりがほとんど感じることができませんでした。私の不勉強のせいもあるかと思いますが、共感はできませんでした。
 ・バッハ/フーガの技法 BWV 1080 より コントラプンクトゥスIII
 ・バッハ=ラフマニノフ/無伴奏ヴァイオリンパルティータ BWV1006 より「前奏曲」
 ・ダッラピッコラ/アンアリベラの音楽帳
 ・シューマン/間奏曲 作品4
 ・バッハ/フーガの技法 BWV 1080 より コントラプンクトゥスIX

4.378@G409 21:15~22:00
 引き続き、狭い部屋での3プログラム目。この部屋にピアノ2台が持ち込まれ、華やかなピアノデュオでこの音楽祭の最後を味わいました。ピアニストは、リディア・ビジャークとサンヤ・ビジャークの姉妹。前日に2台ピアノとオーケストラで同じ曲目を聴きましたが、このデュオは息がぴったりで、音量が大きいのにうるさくない、大変すばらしい演奏でした。特にハ長調のBWV1061は感激しました。2台ピアノのプログラムの間には、クルタークによる連弾の編曲が盛り込まれました。生演奏で聴くのはもちろん初めてで、CDでも聴いたことがない曲もあり、その美しい響きに感動しました。この音の使い方は現代音楽家のもので、高音部への音の追加方法など、聴いていて新しい発見がありました。今度取り上げて研究したいと思います。プログラムは以下の通り。
 ・バッハ/2台ピアノのための協奏曲 ハ長調 BWV 1061 (2台4手)
 ・バッハ=クルターク/「人皆死すべきもの」BWV 643 (連弾)
 ・バッハ=クルターク/「神の時こそいと良き時」BWV 106 (連弾)
 ・バッハ=クルターク/「深き苦しみの淵より、我汝を呼ぶ」BWV 687 (連弾)
 ・バッハ=クルターク/「おお汚れなき神の小羊」BWV 1085 (連弾)
 ・バッハ=クルターク/「いと高きにいます神にのみ栄光あれ」BWV 711 (連弾)
 ・バッハ/2台ピアノのための協奏曲 ハ短調 BWV 1060 (2台4手)

---

上記のような、ピアノだらけの組み合わせ(しかもマニアック)で聴いた人なんて、おそらくいないでしょうね・・・自分でも、もっと多様な楽しみ方をすればよかったと、半分くらいは選択を後悔しています。それでも、Bach with Pianoという私のサイトのタイトル的には抑えるべきところを抑えたと言えますでしょうか。

2009年04月29日

菊地裕介氏のCD「変貌するバッハ」

バッハをピアノで、という分野で大変興味深いCDが発売されました。タイトルは「 『B-A-C-H 変貌するバッハ、ピアノ・トランスクリプションズ』 菊地裕介icon」、有名なブゾーニ、ラフマニノフ、ケンプ、ヘス等の編曲に加え、菊地氏自身の編曲も併せて収録されています。
『B-A-C-H 変貌するバッハ、ピアノ・トランスクリプションズ』 菊地裕介
ブゾーニのシャコンヌは、無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番の終曲。本来は、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ、そしてシャコンヌと5曲からなる組曲です。

この無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番の全曲(シャコンヌ以外)は、有名な音楽家によるピアノ編曲は未だ無いと思われます(チェンバロでは、レオンハルトが自編を演奏してますが)。菊地氏の編曲は、オリジナルの旋律に自然な対旋律を付け、見事なピアノ曲に仕上げています。アルマンドとクーラントはあたかもこういうクラヴィーア曲があるかのようなおとなしい編曲ですが、サラバンドから、低音や音量幅を拡大し、ブゾーニ編のシャコンヌへの橋渡しを彷彿させます。続くジーグもさらに活発に、高音域を使用しピアニスティックな編曲。CDの解説にも書いてありましたが、アルマンドからシャコンヌに向けて次第に自由度を増した編曲になっています。
このCDには菊地氏編曲の手書き譜のうち、サラバンドが付録で入っていました。この菊地氏の編曲は、全音から出版される予定とのこと。非常に楽しみです。絶対に買います。

収録曲は以下の通りです。
無伴奏ヴァイオリンパルティータ 第3番 ホ長調より(ラフマニノフ編)
主よ、人の望みの喜びよ(ヘス編)
無伴奏ヴァイオリンパルティータ 第2番 ニ短調(菊池編、およびブゾーニ編)
シチリアーノ(ケンプ編)
・音楽の捧げもの より 6声のリチェルカーレ
・B-A-C-Hの主題による幻想曲とフーガ(リスト)

(6/14追記)
全音から出版された楽譜も購入しました。

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2009年04月16日

楽譜を出版してもらいました

このたび、私が編曲した作品の一部を、Music Bells (ミュージック・ベルズ)から出版してもらうことになりました。楽譜を出版するというのは、利益を得る云々ではなく、世の中に自分の足跡を残すという意味で、いつか実現したいと考えていたことなのですが、比較的手軽な方法で出版する機会を提供しているMusic Bells (ミュージック・ベルズ)に感謝したいと思います。

Music Bells (ミュージック・ベルズ)

このMusic Bells (ミュージック・ベルズ)では、電子データ楽譜(PDFファイル)と、紙に印刷された楽譜との、どちらかを選んで購入することができます。今回は以下リンクの3曲を出版してもらいました。


2009年04月07日

ブランデンブルク協奏曲 第1番(テューリン編)

昨年末、とある演奏会で取り上げた、ブランデンブルク協奏曲 第1番のピアノ編曲を紹介します。

Bach=Tulin/ Brandenburg Concerto No.1 BWV 1046 1st. mov.
(Bach=Tulin/ Brandenburg Concerto No.1 BWV 1046 1st. mov.)

このブランデンブルク協奏曲 第1番の楽譜(全楽章がピアノソロに編曲されています)は、モスクワのムジカ社から1961年に出版されていたもので、プラハの音楽学校の図書館に眠っていました。編曲者テューリン(Juri Tulin, 1893-1978)については、ロシアの音楽家ということ以外は詳しいことはまだ判明していませんが、この編曲は見事です。原曲が比較的大きな規模の楽器編成ということもあって、ピアノソロで弾けてしまうこと自体が驚きです。

音が密集している中で音域の交換や思い切ったパートの省略(フォッフォッフォッ フォッフォッフォッ フォ- という特徴的なホルンの合図を無視しています)をうまく活用し、ピアノ1台で生み出せる最大限の効果を出せていると思います。下の譜例のように、ピアノの高音域を随所に織り交ぜていることから、ピアノならではの輝かしい響きを出しています。また、同じパッセージを異なる楽器で掛け合う部分についても、3度、6度、音域、とそれぞれ変化をつける工夫をしていることも見てとれます。

Bach=Tulin/ Brandenburg Concerto No.1 BWV 1046 1st. mov.
(Bach=Tulin/ Brandenburg Concerto No.1 BWV 1046 1st. mov.)

とはいえ、シャコンヌなどの編曲とは違ってピアノに適した楽想ではなく、純粋なピアノ曲としては鈍重な感は否めません。バッハの音楽をピアノの音色で楽しむということに割り切ることです。(実際に私がこの曲を演奏した後、数名の方から「わざわざピアノで弾かなくても・・・」と評判は概ねマイナスでした。。。)

ところで、ブランデンブルク協奏曲は、バッハの全楽曲の中でも私が最も好きな曲集です。全6曲、全てが異なる楽器編成で、この第1番はコルノ・ダ・カッチャ(ホルン)、オーボエ、ファゴット、ヴィオリーノ・ピッコロが独奏楽器群、ヴァイオリン、ヴィオラ、ヴィオローネ、通奏低音が合奏楽器群ということで、曲集の中でも大規模な編成です。それぞれの独奏楽器群が緊密に掛け合う論理的・幾何学的な構成がこの曲の魅力です。
ブランデンブルク協奏曲集の全6曲について、ピアノソロ用の編曲をようやく全て揃えることができました。原曲の方が素晴らしいのは当り前の話ですが、楽団を率いることができるわけではないので、このピアノソロ編曲をいつか全曲制覇したいものです。

以下第2~4楽章までの譜例です。演奏者に無理を要求するような編曲ではありません。

◎第2楽章の譜例
Bach=Tulin/ Brandenburg Concerto No.1 BWV 1046 2nd. mov.
(Bach=Tulin/ Brandenburg Concerto No.1 BWV 1046 2nd. mov.)

◎第3楽章の譜例
Bach=Tulin/ Brandenburg Concerto No.1 BWV 1046 3rd. mov.
(Bach=Tulin/ Brandenburg Concerto No.1 BWV 1046 3rd. mov.)

◎第4楽章の譜例
Bach=Tulin/ Brandenburg Concerto No.1 BWV 1046 4th. mov.
(Bach=Tulin/ Brandenburg Concerto No.1 BWV 1046 4th. mov.)

2009年04月03日

フルートとピアノ(チェンバロ)のためのソナタ

バッハのフルート・ソナタというと、フルートとチェンバロ・オブリガートによるもの(BWV 1030~1032)と、フルートと通奏低音によるもの(BWV 1033~1035)がそれぞれ3曲ずつあります。
これがまた名曲揃いなわけですが、とりわけ傑作の誉れ高いロ短調のソナタ、BWV 1030をフルートの友人と挑戦することにしました。

現代のフルートとピアノで演奏することになるわけですが、私は実はフルートとチェンバロの組み合わせよりピアノとの組み合わせの方がよりいい響きになる、と感じています。ところが、ヴィオラ・ダ・ガンバのソナタや、ヴァイオリンのソナタではピアノとの組み合わせで録音がいくつかあるのですが、フルートのソナタの方でピアノと組み合わせた録音はあまり見かけません。何故でしょう?


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そんな中、唯一私が知っているピアノとの組み合わせでの録音、これが大変お気に入りなものなのでぜひ紹介したいと思います。hänsslerから出ている「Chamber Music For Flute: Gerard(Fl)icon」(BachPodにも入っています)で、無伴奏フルートパルティータ BWV1013 なども含めた2枚組です。

Amazonでは見つけられませんでしたが、NaxosのNMLで聴くこともできます。
http://ml.naxos.jp/album/CD92.121

なおこのCDの中には、リュート組曲 ハ短調 BWV997のフルートとピアノのための編曲が収録されており、それもまたとても心地よい音楽です。

好みは分かれるかもしれませんが、私は是非ともおすすめしたいCDです。

続きを読む "フルートとピアノ(チェンバロ)のためのソナタ" »

2009年03月26日

ブゾーニ編のピアノ協奏曲 二短調 BWV 1052

以前CDの紹介「ブゾーニ版バッハ集のCD 第1弾」で取り上げた、ブゾーニ編曲のピアノ協奏曲 ニ短調 BWV1052について、改めて楽譜を交えて紹介したいと思います。

これは当時のチェンバロ協奏曲を、ピアノでもっと良く響くように、ブゾーニが数々の工夫を加えたものです。たとえば通奏低音パートとしてのピアノパートは排除し、ピアノの音域をフル活用するようにピアノならではのパッセージに書き換えられています。
以下、オリジナルのチェンバロパートとブゾーニ版の同じ部分を見比べてみます。

Bach/ Concerto d-moll BWV 1052
(Bach/ Concerto d-moll BWV 1052)

オリジナルでは同じ音域でのパッセージを、音楽の流れそのものは変えずに、ブゾーニ版では高音まで演奏音域を拡大しているのがわかります。

Bach=Busoni/ Piano Concerto d-moll BWV 1052
(Bach=Busoni/ Piano Concerto d-moll BWV 1052)

この手法はあらゆる場所で活用されています。また次の例は、音域の拡大に加え、和音に音を追加することで響きを豊かにしています。

Bach/ Concerto d-moll BWV 1052
(Bach/ Concerto d-moll BWV 1052)

Bach=Busoni/ Piano Concerto d-moll BWV 1052
(Bach=Busoni/ Piano Concerto d-moll BWV 1052)

そしてカデンツァはこうなってます。小さくて見えないかと思いますが、ピアにスティックな様はわかると思います。
Bach=Busoni/ Piano Concerto d-moll BWV 1052
(Bach=Busoni/ Piano Concerto d-moll BWV 1052)

さてその録音ですが、まずは近年のクリアな音質での録音はとしては、以前紹介した「ブゾーニ版バッハ集のCD 第1弾」のほかに、「アダム・スコウマルの演奏によるCD」が挙げられます。このCDには、この協奏曲の他に、ラフマニノフ編曲の無伴奏ヴァイオリンパルティータ、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番が収録されており面白いカップリングです。

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そして、ヒストリカルな録音としては、リパッティのCD「Dinu Lipatti plays Bach」や「Lipatti Liszt, Bartok, J.s.bach: Piano Concerto」が挙げられます。特に前者はリパッティが残したバッハの名録音が多く含まれており、ぜひ手にしておきたい一枚です。

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以上、主にHMVへのリンクを張りましたが、Amazonでは以下のリンクをご参照ください。

----(ご参考)Amazonでの入手方法----








2009年03月22日

ハイドシェックのパルティータ

今回はバッハのオリジナル作品の録音についてです。
エリック・ハイドシェック(Eric Heidsieck, 1936-)、フランスの大ピアニストですが、私のCD棚にはモーツアルトとフォーレの録音が数枚ある程度で、バッハを弾いている録音があるなど、知りませんでした。

パルティータ第1番、第2番、第3番 ハイドシェック

先月HMVの新着情報でハイドシェックのバッハ録音が再発売されるという情報を知り予約注文しており、今日届いて早速聴いている次第ですが、その素晴らしさに吃驚させられました。強弱やペダルを多用していますが、細かいところまで配慮が行き届いているというか、丁寧に曲の良さを訴えかけてくるというか、なかなか言葉で表せないながら大変気に入ったのは確かです。曲目は、パルティータ全曲と、イタリア協奏曲、フランス風序曲というバッハの出版された代表作をカバー。よく聴いてみると、なにやら随所に音が追加され艶やかな音楽になっています。もしやブゾーニ版(ペトリ編)?と思いきや、それらとも違いました。ハイドシェックのセンスなのでしょうね。
なお、以下のリンクで、HMVで購入できます。

パルティータ第1番、第2番、第3番 ハイドシェック
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パルティータ第4番、第5番、第6番 ハイドシェック
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イタリア協奏曲、フランス風序曲 ハイドシェック
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バッハの二台ピアノ協奏曲作品の録音(ハイドシェック夫妻での演奏)もあるようで、そちらも到着が待ち遠しいです。

2台のピアノのための協奏曲集 ハイドシェック、T.ハイドシェック、グラン・リュエ音楽祭管
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2009年03月21日

左手のためのバッハ編曲

左手のためのバッハ編曲。先日は、私が自分で編曲した左手のためのサラバンドについて書きましたが、今回は名のある音楽家が残した左手のためのバッハの編曲を紹介しようと思います。結構数があるようで、曲目データベースの方でも、左手のための曲目が網羅できていなかったので、この機会に整理してみました。
もっとも有名なものとしては、ブラームス編曲のシャコンヌでしょう。記録によれば、1879年に書かれたようです。

Bach=Brahms/ Chacconne for left hand only

次に有名どころとして、ラヴェルから左手のための協奏曲を献呈された左手ピアニスト、ヴィットゲンシュタイン(Paul Wittgenstein,1887-1961) の残した「左手のための練習曲集」(Schule für die linke Hand)の中にも、バッハの編曲がいくつか含まれています。
 →ヴィットゲンシュタインによる編曲リスト

ところで、おそらく左手だけのピアニストとしてはもっとも古いと思われる、ゲザ・ジチー(Géza Zichy, 1849-1924) も、1883年に左手用のシャコンヌを残しています。この編曲はブラームスによるものよりもずっと難しく、結尾部には独自のカデンツを付け加えていたりと、非常にピアニスティックな編曲になっています。ブラームス編と並べて見てみるとその凄まじさがよくわかります。冒頭部分はそれほど変わりませんが、音域は1オクターブ高く設定しています。
Bach=Zichy/ Chacconne for left hand only

まだまだあります。大量のバッハの編曲を残している、イシドール・フィリップ(Isidor Philipp, 1863-1958) は、「バッハによる、左手のための4つの練習曲」という曲集を残しています。この曲集には、無伴奏ヴァイオリン曲の中から、ホ長調の前奏曲ロ短調のブーレト短調のプレスト、そしてシャコンヌ(下図)が含まれています。
Bach=Philipp/ Chacconne for left hand only

さらに、現役のピアニスト、ラウル・ソーザが編曲した半音階的幻想曲とフーガは驚異的な編曲です。1999年に来日したときに実際に聴きましたが、独自の創造を織り交ぜながら、 メロディーの音型や音域を変えつつ音楽の持つ精神そのものを見事に表現しています。これはCDでも聴けるのでぜひ聞いてみて下さい。

 →「Amazon: An Anthology for the Left Hand

ソーザの他の左手用編曲としては、3声のインヴェンション(シンフォニア) 第14番 変ロ長調もあります。





その他、ジョセフィー(Rafael Joseffy, 1852-1915)は、無伴奏ヴァイオリンパルティータのガヴォットを左手用に編曲しています。これも見事な編曲だと思います。
Bach=Joseffy/ Gavotte for left hand only

最後に紹介するのは、楽譜は見たことが無いですが、トレインという人が編曲した、無伴奏チェロ組曲第1番プレリュードの左手版の映像はYouTubeで見ることができます。

以上、私が知る左手のためのバッハ編曲を網羅したつもりです。他にご存じの方がいらっしゃれば、ぜひご教示下さい。

2009年03月19日

hyperionバッハ編曲集 第7弾(発売予定)

hyperionレーベルが定期的にリリースしてきたバッハ編曲集、次は第7弾で、マックス・レーガー(Max Reger, 1873-1916) の編曲集、発売は2009年6月とのことです。ピアニストはマルクス・ベッカー(Markus Becker)。レーガーの編曲は音が多く重厚なもので、どのような音楽として再現されているか非常に楽しみです。hyperionバッハ編曲集 第4弾・フェインベルグ編と同様に、CD2枚組、1CDプライスだそうです。以下のhyperionサイトへのリンクで、曲の冒頭が試聴できます。やはりテンポは遅め、ロマン派風解釈っぽいです。発売後にまたレビューを書きたいです。

Bach J S: Piano Transcriptions, Vol. 7 – Max Reger


ピアノ・トランスクリプションズ第7集~レーガー編曲全集 ベッカー(2CD)

収録曲は以下の通りです。
Prelude and Fugue in D major, BWV532
O Mensch, bewein' dein' Sunde gross, BWV622
Durch Adams Fall ist ganz verderbt, BWV637
Ach wie nichtig, ach wie fluchtig, BWV644
Nun danket alle Gott, BWV657
Herzlich tut mich verlangen, BWV727
Wenn wir in hochsten Noten sein 'Vor deinen Thron tret ich', BWV668
Valet will ich dir geben, BWV736
Es ist das Heil uns kommen her, BWV638
Liebster Jesu, wir sind hier, BWV730
Vom Himmel hoch, da komm ich her, BWV606
Prelude and Fugue in E flat major 'St Anne', BWV552
Prelude and Fugue in E minor 'The wedge', BWV548
Christ lag in Todesbanden, BWV Anh 171
Ich ruf' zu dir, Herr Jesu Christ, BWV639
An Wasserflussen Babylon, BWV653b
Komm, heiliger Geist Herre Gott, BWV651
Schmucke dich, o liebe Seele, BWV654
Das alte Jahr vergangen ist, BWV614
Toccata and Fugue in D minor, BWV565

2009年01月25日

左手のためのサラバンド(パルティータ第1番より)

2009年初めての更新は、今年初めての自編作品、「左手のためのサラバンド」です。バッハのパルティータ 第1番 変ロ長調の、4曲目サラバンド。年末にバッハ好きのピアノ仲間が右手を痛めてしまったとのことで、左手だけで弾けるバッハの曲を探してました。左手用のバッハとしては有名どころではブラームス編曲のシャコンヌなどがありますが、ちょっと気安く取り組むには難しすぎるかもしれません。バッハの曲は複数の声部が絡み合う曲がほとんどのため、なかなか左手一本で弾くのは難しいですが、そんな中、今自分が練習中のパルティータ第1番のサラバンドが、ちょっと頑張れば左手だけで弾けそうな予感がしました。そこで取り組んでみたのが、今回の編曲作品です。一段譜に収めることにこだわり、指使いまで指定して作りました。

オリジナルの冒頭の楽譜はこうなっています。

Bach/ Sarabande from Partita No.1 BWV 825 (Original)
(Bach/ Sarabande from Partita No.1 BWV 825 (Original) )

ここを、主旋律はそのまま弾き、バスは主旋律の前打装飾音として扱うことで、左手だけの一段譜に編曲しました。それが以下の楽譜です。

Bach=Tanaka/ Sarabande for left hand only from BWV 825
(Bach=Tanaka/ Sarabande for left hand only from BWV 825)

実際に弾いてみると、それなりに音楽になります。前半はほとんどすべての音を拾うことに成功しましたが、後半は旋律を主張する声部が増え、特に21小節目以降はどう弾くべきか迷うところです。まずオリジナルの楽譜はこうなっています。

Bach/ Sarabande from Partita No.1 BWV 825 (Original)
(Bach/ Sarabande from Partita No.1 BWV 825 (Original) )

ここは、右手トリルの継続はあきらめ、最初の装飾音として印象付けることで、あとはバスに集中することにしました。トリル後の二旋律の絡み合いは、何とか片手で弾けました。

Bach=Tanaka/ Sarabande for left hand only from BWV 825
(Bach=Tanaka/ Sarabande for left hand only from BWV 825)

果たしてこの編曲が受け入れられるかどうか不安もありましたが、この楽譜を渡したところ喜んで下さり、実際に弾けるとも仰っていたので、自己満足だけに終わらずにとても嬉しかったです。

今回と同じアイデアで、イギリス組曲 第6番のサラバンドも弾けるかもしれません。

続きを読む "左手のためのサラバンド(パルティータ第1番より)" »

2008年12月14日

シフラの弾くバッハ(初出含む)

超絶技巧で知られるジョルジュ・シフラ(Georges Cziffra, 1921-1994)。スタジオ、ライブともにたくさんの録音が残されていますが、バッハの録音はほとんど無く、編曲もので数曲あるのみです。その中でもブゾーニ編曲の前奏曲とフーガ 二長調 BWV 532はお気に入りだったようで、ライブ録音、スタジオ録音、また映像でも残されています。
ジョルジュ・シフラ/スタジオ録音全集1956-1986(40CD)icon
ところで最近、シフラの没後15年記念企画として
ジョルジュ・シフラ/スタジオ録音全集1956-1986iconというCD40枚組のボックスが発売されましたが、その中に今まで未公開だった曲がいくつか入っていたので、つい買ってしまいました。それがかの有名なトッカータとフーガ ニ短調 BWV 565のプライベート録音で、これがまた面白い編曲。彼のスタジオ録音特有の淡々とした演奏。ブゾーニ編曲と書いてありますが、明らかに多くの音をいじっており、シフラ編曲と言っても良いでしょう。この曲は以前blog記事で書いた通りたくさんの編曲を見てきましたが、他のどれとも異なります。高音や低音に付け加えられた派手な飾り付け、半音階進行の対旋律の追加など、オルガン効果をピアノで出そうという編曲というよりも見世物的な要素が強いと思います。シフラはなぜこの曲の録音を公開しなかったのか、真相はわかりませんが、シフラ編曲版を作る実験段階だったのかも知れません。何にせよ、このような面白い編曲も聴けたので、40枚組を買った意義を十分感じることができました。

----(ご参考)シフラのバッハ編曲物レパートリーは以下の通りです。
前奏曲とフーガ ニ長調 BWV 532 (1962年Live、1968年、1981年)
コラール『目覚めよ、と呼ぶ声あり』 BWV 645 (1968年)
コラール『汝のうちに喜びあり』BWV 615 (1968年)
コラール『今ぞ喜べ、愛するキリスト者の仲間たち』BWV 734 (1968年)
トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565 (1965年, Collection G. Cziffra)

※なお、CDの曲目にも、ディスコグラフィにも、BWV 629とありますが、BWV 734の間違いです。


----(ご参考)Amazonでの入手方法----



2008年12月04日

ファジル・サイのコンサート

今日は、すみだトリフォニーホールでファジル・サイのピアノリサイタルに行ってきました。
サイの演奏会は、何日かあるリサイタルシリーズの中で大抵1日はバッハかバッハの編曲物が含まれているので、今までも何度か足を運んできました。今回も前半はオールバッハ(の予定でしたが、曲目変更でパッサカリアからヤナーチェクのソナタになってました)。中でも私が最も楽しみにしていた曲目が、初めて聴くことになるサイ編曲の幻想曲 ト短調 BWV 542。オルガン曲の中でも特に有名なこの曲、サイは一体どのように編曲して魅せてくれるのか。曲目に「幻想曲」とだけ書いてあって、続くフーガは弾いてくれるのか、など心配しつつ、幻想曲部分が始まりました。出だしは非常にシンプル、改訂前のリスト編曲と同じような始まり方でした。幻想曲について言えば、私の予想は完全に裏切られ(悪い意味ではなく)、オルガンの響きを思わせる迫力のある音使いはほとんどありませんでした。リスト編などでは多くのピアニストが盛り上げる部分を、全体的に速いテンポで微妙なニュアンス(弱め)の音使いをしていて、新鮮な趣でした。その効果はフーガに入ってようやく気づかされました。フーガはかなりの迫力をもった編曲で、サイ得意の大音量の低音を鳴らしていました。きっとこの曲もそのうち楽譜として出版されることでしょう。

サイの弾くバッハは、シャコンヌにしても、オリジナルのフランス組曲にしても、強弱・緩急が激しく、実を言うと私好みの解釈ではありませんが、演奏会で弾く姿とともに入ってくる音楽としては惹きこまれていく感覚があり、不思議です。独特のリズム感があるのでしょうか。

終演後のサイン会で、サイ編曲のパッサカリアの楽譜にサインしてもらいました。当初プログラムに予定されていたサイ編のパッサカリアがなくなってしまったのは残念でしたが、なかなか楽しめた演奏会でした。今回のプログラムは以下の通り。

ファジル・サイ・プロジェクト in Tokyo 2008
2008/12/4(木) 第1夜:ピアノ・ソロ
バッハ=ブゾーニ/シャコンヌ
バッハ=サイ/幻想曲 ト短調 BWV542
バッハ/フランス組曲第6番 ホ長調 BWV817
ヤナーチェク/ソナタ 1.X.1905
(休憩)
スカルラッティ/ソナタ へ長調 K.378、ニ短調 K.1、ハ長調 K.159
ラヴェル/ソナチネ
プロコフィエフ/ソナタ第7番 「戦争ソナタ」
(アンコール)
ムソルグスキー/展覧会の絵(途中から)
サイ/黒い大地
ベートーヴェン/ソナタ「テレーゼ」

2008年11月07日

初めてバッハのピアノ編曲を試みた音楽家

バッハの音楽は、おそらく他のどの作曲家の音楽よりもピアノ編曲されている数が多いと思いますが、それでは一体誰が最初にバッハの音楽をピアノ編曲し始めたのでしょうか。一般的には、フランツ・リスト(Franz Liszt, 1811-1886)が始めで、その後リストの弟子たち、サンサーンス、ブゾーニ、ラフマニノフ、などなど名編曲が生まれていったというのが定説ですが、色々と調べているうちに、ほぼ同年代ながらもう少し早い時期からバッハのピアノ編曲を行っていたかもしれない音楽家の名前が浮上してきました。チェルリッツキー(Ivan Karlovitsch Tscherlitzky, 1799-1865)、カタカナの読み方が良いかどうか不明ですが、何と18世紀生まれ。リストの6つのオルガン前奏曲とフーガ集が出版されたのが1850年ですが、このTscherlitzkyが編曲したものの一部が1844年に出版されていたという記録が見つかりました。Tscherlitzkyの編曲作品リストを見ると、バッハのオルガン曲のほぼすべての主要曲が含まれており、その数は50種類を超えています。残念ながらまだTscherlitzkyの編曲はあまり集まっていないのですが、ペテルブルクのどこかの図書館に埋もれているのでしょうか。リストが残したバッハのオルガン前奏曲とフーガ集はすべて網羅しているようですので、ぜひ一度リスト編とTscherlitzky編を見比べてみたいと思います。

さて、最近になってこのTscherlitzkyの経歴についてようやく少し知ることができました。ペテルブルクのオルガニストであり、ピアニストでもあり、作曲家でもあり、音楽教授でもあったそうです。今までGoogleで検索してもほとんど出てこなかったのですが、最近になってYouTubeの動画が検索結果に出てくるようになりました。下のムービーが、Tscherlitzky編曲のオルガン前奏曲とフーガ ロ短調 BWV 544です。なんと演奏者はThomas Labé。私がバッハのピアノ編曲にはまるきっかけを与えてくれたピアニストで、CD紹介blog記事など過去も何度か取り上げました。このムービーの中でも、Tscherlitzkyは初めてバッハのオルガン曲をピアノソロに編曲した人だと紹介されています。


Organ Prelude and Fugue in B Minor, BWV 544
Part I: Prelude
Transcribed for solo piano by Ivan Karlovitsch Tscherlitzky (1799-1865)
Thomas Labé, Piano

続くフーガも以下リンクで見れます。
http://jp.youtube.com/watch?v=wEJM4LYRwYg

このTscherlitzkyについて、もし詳細をご存知の方がいらっしゃればぜひとも教えてください!

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