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CD/DVD アーカイブ

2007年08月06日

カンタータ 第29番 より 第1曲「シンフォニア」

今日紹介するのは、カンタータ第29番の序曲の編曲です。原曲はオルガンにトランペットやティンパニーが加わり、祝祭的な雰囲気いっぱいの曲ですが、さらにさかのぼると無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ ホ長調と同じ音楽になります。今回は出版譜として持っている以下4つの編曲を比較してみました。
まず最近手に入れたものとして、カートゥン(Leon Kartun)の編曲です。カートゥンについては何の情報も持っていません(カタカナ表記が妥当かどうかもわかりません)。
Bach=Kartun/ Ouverture from Cantata No.29 BWV 29
(Bach=Kartun/ Ouverture from Cantata No.29 BWV 29)

次に紹介するのは、サンサーンスによる編曲。Kartun編曲よりもオクターブを多用しているため、より派手になっています。楽譜が入手できる店は限られますが、CDはNAXOSから出ているため比較的容易に入手できます。(アマゾンではこちら→Piano Transcription
Bach=Saint-Saens/ Ouverture from Cantata No.29 BWV 29
(Bach=Saint-Saens/ Ouverture from Cantata No.29 BWV 29)

サンサーンス編よりさらに音が多いのが、ケンプ編です。こちらは日本では全音から出版されていますし、比較的手に入れやすい部類の楽譜です。
(たとえばAmazonではこちら→楽譜:バッハ=ケンプ ピアノのための10の編曲、CD:Bach Arrangements

Bach=Kempff/ Prelude(Sinfonia) from Cantata No.29 BWV 29
(Bach=Kempff/ Prelude(Sinfonia) from Cantata No.29 BWV 29)

4つ目に紹介するのは、リストやチャイコフスキーの弟子であり、ラフマニノフの師として有名なシロティの編曲。非常にわかりやすくシンプルな編曲です。
Bach=Siloti/ Prelude(Sinfonia) from Cantata No.29 BWV 29
(Bach=Siloti/ Prelude(Sinfonia) from Cantata No.29 BWV 29)

こうして4つ並べてみると、それぞれずいぶんとちがった手法で編曲しているのがよくわかります。優劣をつけるのではなく、楽しみ方が違うと私は思っています。

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2007年08月09日

Alexander Siloti (1863-1945)

シロティ(Alexander Siloti)に関する書籍、「 Lost in the Stars: The Forgotten Musical Career of Alexander Siloti 」が最近届きましたので紹介します。(日本では一般にカタカナで「シロティ」と表記されますが、発音は「ジロティ」の方が近いようです。ですが、このサイトでは「シロティ」と統一しています)
シロティはリスト、アントン・ルビンシュタイン、チャイコフスキーの弟子であり、ラフマニノフの師でもあります。バッハのピアノ編曲を多く残しており、Carl Fischer社から出版されているThe Alexander Siloti Collectionにも大多数の作品が収録されています。
この本には、シロティが残したバッハの編曲作品のうち14曲を収録したCDが付録で付いています。このCDでしか聞けない編曲(2007.8時点)もいくつかあり、かなりマニアックな音源の一つです。

シロティ編曲の録音で、より手に入れやすいCDとして「Bach Piano Transcriptions - 5 」があります。このCDには、シロティのほか、ゲディケカバレフスキーカトワールなどロシアの音楽家による編曲が収録されています。


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2007年08月14日

前奏曲 ロ短調

引き続きシロティの話題です。シロティ編曲の前奏曲 ロ短調、原曲はバッハの息子のために書いたと言われる「W.フリードマンのための音楽帳」に含まれる前奏曲 ホ短調 BWV855aです。まずは原曲の楽譜を見てみましょう。
Bach/ Prelude No.5 W. F. Bach Book, BWV 855a
(Bach/ Prelude No.5 W. F. Bach Book, BWV 855a)

平均律 第1巻 第10番(BWV 855)の前奏曲によく似ていることはすぐおわかりでしょうか。平均律に収録された前奏曲では右手で演奏する旋律はさらに装飾されていますが、BWV 855aでは和音進行のみが記譜されています。

さて、次にシロティ編曲の前奏曲 ロ短調を見てみましょう。より音楽的な深みをもたせるために原曲のホ短調からロ短調に書き換えられています。
Bach=Siloti/ Prelude h-moll
(Bach=Siloti/ Prelude h-moll)

また非常にゆっくりとしたテンポ指定でささやきかけるような弱音で始まり、高音部に移された分散和音の中に哀愁漂う低音のメロディーが浮き立ち、なんともロマンチックな曲になっています。

この編曲はシロティの娘、キリエナ・シロティに献呈されています。バッハの編曲モノとしてはめずらしくいろいろなCDに収録されていますが、手に入れやすいものとしては以下のリンクを参考にしてください。たとえば最近ようやくCD化された、ワイセンベルグの「バッハ:主よ、人の望みの喜びよ(ピアノ曲集)」にも収録されています。


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2007年08月15日

The Art Of Samuel Feinberg Vol. 3

注文していたCD、「The art of Samuel Feinberg, Vol. 3: J.S. Bach works for clavier and organ」が届きました。フェインベルグ(Samuil Feinberg, 1890-1962)は、私の最も気に入っている音楽家の一人であり、その独特なバッハ演奏解釈は心を捕らえて離しません。私のホームページの中でも、平均律全2巻のCD紹介や、編曲集のCD紹介で書いていますので、そちらもご覧下さい。

さて、今回購入したこのCD「The art of Samuel Feinberg, Vol. 3: J.S. Bach works for clavier and organ」は、既に持っていた編曲集のCDとほとんどの曲が重複しますが、唯一初CD化された音源として、「イタリア風アリアと変奏 BWV 989」が収録されています。露メロディヤのディスコグラフィからはこの曲の存在が確認できていましたが、永らくその録音を耳にすることができないでいました。ぱっと聴いてすぐに判る、フェインベルグのクセのある演奏。今回ようやくCDで聴けて感動しています。

フェインベルグのその他の録音や作品については、こちらのページで紹介しています。ただ大半は通常手に入れるのが難しい状態です。今回取り上げたCDは、Amazonで以下のリンクから購入できます。

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2007年08月21日

オルガン前奏曲とフーガ ト短調 BWV 535

今回取り上げるのはオルガン前奏曲とフーガ ト短調 BWV 535。バッハ初期のオルガン曲ですが、当時としては冒険的な和声を使用し即興的に音楽を展開していく意欲作です。即興的でありながらも、前奏曲の中にフーガのテーマが仄めかされ、フーガの最後には前奏曲の曲想を回帰しているという全体の統一感があります。

さて、この曲のピアノ編曲としては、またまた登場するシロティによる編曲があります。ピアノの広い音域を使った派手で演奏効果がある割には比較的容易に弾ける、良い編曲だと思います。それがためか、結構多くのピアニストによって録音が残されています。その中でも、ネルソン・フレイレのライブ録音「Nelson Freire en Concert」にアンコールピースとして収録されているものは、熱気が伝わってくるすばらしい録音です。その他にも、「Bach for Christmas」(→本ページのCD紹介)や、「 Lost in the Stars: The Forgotten Musical Career of Alexander Siloti 」にも収録されています。楽譜は、Carl Fischer社から出版されているThe Alexander Siloti Collectionに含まれています。以下は、シロティ編の前奏曲の冒頭部分です。
Bach=Siloti/ Organ Prelude in G minor BWV 535
(Bach=Siloti/ Organ Prelude in G minor BWV 535)

シロティ編の最大の難点は、前奏曲のみ抜粋ということです。最初に述べたとおり、前奏曲にフーガのテーマが出現していることなどからも、前奏曲とフーガを通して演奏したいところです。

一方で、タチアナ・ニコラーエワのCD「バッハ:小プレリュードと小フーガ」には、ニコラーエワ自身の編曲でこの前奏曲とフーガが通して演奏されています。シロティ編よりも音の厚さはないものの、端正な美しさのある演奏です。

さて、先のシロティ編は、楽譜に書いてある情報によるとテオドール・サーントによる編曲の改編とあります。長い間このサーント編を探していたのですが、最近ようやく海外の音楽愛好家から複写を手に入れることができました。 なんと、その元となったサーント編は、フーガまで通して編曲されていたのです。以下がフーガの冒頭部分です。

Bach=Szanto/ Fugue from Organ Prelude and Fugue in G minor BWV 535
(Bach=Szanto/ Fugue from Organ Prelude and Fugue in G minor BWV 535)

これが、フーガの後半部ではこのような分厚く華やかな展開を見せます(2小節目のバスにテーマが現れています)。まるでブゾーニによる豪華爛漫なバッハの編曲を想起させます。そう、サーントはブゾーニの弟子なのです。

Bach=Szanto/ Fugue from Organ Prelude and Fugue in G minor BWV 535
(Bach=Szanto/ Fugue from Organ Prelude and Fugue in G minor BWV 535)

残念ながらこのサーント編の録音は無いと思われます。腕の立つピアニストに録音してもらいたいところです。ただ、シロティの前奏曲の改編は、バッハ=ブゾーニのシャコンヌのシロティ改編版のように元編曲より音を減らして再構築しているものですが、音を減らして単純化しただけでなく、音楽的にはより洗練されているように見受けられます。サーント編はとにかくたくさんの音が詰め込まれていますが、シロティ編の楽譜の方が保続音の響き方等、よりシンプルに効果を出せると思います。こう見ると、やはりシロティの改編がフーガを伴っていないのが残念でなりません。

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2007年08月26日

Transcendental Bach (1)

今回もCDの紹介です。私がバッハのピアノ編曲に興味を持つようになるきっかけのCDで、特別な存在です。本体のホームページでも既に紹介していますが、この素晴らしい録音についてはあらためてここで取り上げたいと思います(1曲ごとに紹介するので、何回かに分けて書いていきます)。「Transcendental Bach」、日本語で言うならば「超絶技巧バッハ」で、CDのタイトル通り、超絶技巧をもってして初めて達成し得るバッハのピアノ音楽がここにあります。演奏はThomas Labe。

収録曲はすべてバッハの無伴奏弦楽器曲のピアノ編曲ですが、聴く前にはまず原曲の無伴奏曲のイメージは頭から捨て去る必要があります。原曲の(精神的に素晴らしい曲だという)先入観があると「こんな曲のはずがない」 というマイナスイメージを抱いてしまう可能性があるためです。

CDを頭から聴いていきましょう。まずはゴドフスキー編曲の無伴奏チェロ組曲 第5番より 前奏曲とフーガです。楽譜を見ると、原曲の持続音の部分はほとんど対旋律で埋め尽くされ、執拗なまでのオクターブの低音の連続がありますが、演奏は決して重くなりすぎず、 原曲の持つ魅力とは全く別の新たな命が吹き込まれています。特にフーガでは、新たに追加された対旋律によって響きが艶やかに彩られ、大変魅力的な曲となっています。
Bach=Godowsky/Prelude and Fugue from Suite No.5 for violincello solo BWV 1011
(Bach=Godowsky/Prelude and Fugue from Suite No.5 for violincello solo BWV 1011)
本来の組曲ではこの前奏曲のあとに舞曲が続きますが、前奏曲があまりに荘厳に編曲されているがゆえに、続く舞曲が(原曲は良い曲であっても)おとなしく尻つぼみと感じてしまいます。このCDでは前奏曲(とフーガ)だけが収録されていますが、そのバランスを考えてのことかもしれません。(単純に演奏時間の問題かもしれませんが)

次にラフマニノフ編曲の無伴奏ヴァイオリンパルティータ 第3番より 前奏曲、ガヴォットとジーグ。荘重なゴドフスキー編の前曲とうって変わって、快速で軽妙な音楽が繰り広げられます。曲想そのものが爽やかですが、一般的なピアニストが採用するテンポよりもずいぶんと速い速度で一気に演奏されます。この曲でもまたゴドフスキー編と同じように、音の流れの中に見事に追加された対旋律は、 すべて冒頭の音型から紡ぎ出されています。
Bach=Rachmaninoff/Prelude from Partita No.3 for violin solo BWV 1006
(Bach=Rachmaninoff/Prelude from Partita No.3 for violin solo BWV 1006)


その後、ゴドフスキー編曲に戻ります。無伴奏チェロ組曲 第3番も、基本は休符を音で埋め尽くした感じの編曲になります。
シロティによる同曲の編曲(「無伴奏チェロ組曲による子供のための練習曲」に含まれています)と見比べてみましょう。どちらも前奏曲の冒頭部分です。
Bach=Siloti/Prelude from Four Etude after Cello Suites
(Bach=Siloti/Prelude from Four Etude after Cello Suites)
Bach=Godowsky/Prelude from Suite No.3 for violincello solo BWV 1009
(Bach=Godowsky/Prelude from Suite No.3 for violincello solo BWV 1009)
どうでしょうか?16分音符の本来の旋律をオクターブで厚く奏し、支えるバスと新たな旋律が合体され、全く新しい曲になっています。繰り返しますが、原曲を思い出さないで下さい。この曲を組曲を通して颯爽と演奏する様がこのCDに収録されているのです。

収録曲紹介の続きは、また後日書きます。
(to be continued...)



<収録曲>


2007年08月31日

Transcendental Bach (2)

前回に引き続きThomas LabeのCD「Transcendental Bach」の紹介です。

ゴドフスキー編曲の無伴奏チェロ組曲 第2番。この曲はアンダンテ・カンタービレ、ピアニッシモでゆったりと始まります。前奏曲の冒頭には、本来の原曲に導入の2小節が追加されています。
Bach=Godowsky/Prelude from Suite No.2 for violincello solo BWV 1008
(Bach=Godowsky/Prelude from Suite No.2 for violincello solo BWV 1008)

前奏曲、アルマンドとゆったりとした曲想が続いた後、嵐が吹き荒れるのがクーラントです。本来のクーラントの軽やかな舞曲とはかけ離れた、激しい音楽になっています。
Bach=Godowsky/Courante from Suite No.2 for violincello solo BWV 1008
(Bach=Godowsky/Courante from Suite No.2 for violincello solo BWV 1008)

無伴奏チェロ組曲の全楽章演奏に続くのは、今度は無伴奏ヴァイオリンソナタの方から一つの楽章の抜粋です。無伴奏ヴァイオリンソナタ 第1番より シチリアーノ。CDの中でも、重い音楽が続く中での小休止の趣があります。
Bach=Godowsky/Siciliana from Sonata No.1 for violin solo BWV 1001
(Bach=Godowsky/Siciliana from Sonata No.1 for violin solo BWV 1001)

このCDにもうひと山ありました。無伴奏ヴァイオリン曲のピアノ版として最も有名なブゾーニ編「シャコンヌ」。 恐ろしいスピードで走り抜けるこの演奏にまず驚かされます。しみじみと味わうシャコンヌを期待すると卒倒します。(同じ高速演奏でもワイセンベルグのCDで聴ける演奏の方が味わいがあります)

CDの最後は、無伴奏ヴァイオリンソナタ 第2番より アリアです。シャコンヌを弾き終え、拍手喝采の中で名残惜しくアンコールで演奏したかのような、心憎い配置です。

Bach=Godowsky/Aria from Sonata No.3 for violin solo BWV 1003
(Bach=Godowsky/Aria from Sonata No.3 for violin solo BWV 1003)


<収録曲>


2007年09月01日

Transcriptions by Ira Levin

今日は仕事関係の研修の帰り道で、久しぶりに秋葉原の石丸電気のクラシック売り場に立ち寄り、CDを買いました。やはり店頭では、Webで見つけられないいろいろなCDに出会えます。今日買ったCDでおもしろかったのは、「Piano Transcriptions by Ira Levin」です(帰ってきて調べたらAmazonでも売っていました)。
AmazonではCDのジャケットイメージがなかったので、ここに貼り付けてみました。
Piano Transcriptions by Ira Levin

このCDには、すべて演奏者・Ira Levinによって編曲された曲が収録されています。そのうち5曲がバッハのピアノ編曲で、1曲目はトッカータ ヘ長調 BWV 540で始まります。バッハのオルガントッカータというと、まずニ短調 BWV565ハ長調 BWV564を思い浮かべますが、このヘ長調 BWV 540は規模も大きく、大胆な転調部分をメンデルスゾーンが「まるで教会が崩れ落ちようとするかのようだ」と評したそうです。

Levinの編曲は楽譜を持っていないので、代わりにダルベール編曲の冒頭を譜例として掲載します。
Bach=d'Albert/ Toccata and Fugue in F major BWV 540
(Bach=d'Albert/ Toccata and Fugue in F major BWV 540)

CDで聴けるLevinによる編曲・演奏は、素晴しいものでした。冒頭のバスFは、ソステヌート・ペダルで相当長い間鳴っており、オルガンの壮大さもよく表現されています。唯一、変だなと思うのが、原曲にない独自のアレンジが現れることです(約30小節分)。本来同じテーマが繰り返されるところですが、高音部で現代音楽風に展開され、その後また原曲に戻ります。オルガン原曲もきわめて壮麗な響きがありますが、ブゾーニによるオルガン曲の編曲のように和音は3度・6度・オクターブで増強され見事に再現されています。この曲については初めてピアノによる演奏を聴いて、あらためて良さがわかりました。この1曲のためだけにでも、このCDを買った価値があったと思っています。
なお、それ以外の曲はまだしっかり聴いてません。以下に収録曲を掲載しておきます。


<収録曲>


2007年09月06日

F.Busoni nach Bach Piano Works

今回もCDの紹介です。パドヴァ(Andrea Padova)の演奏で、「F.Busoni nach Bach Piano Works」というCDです。このピアニストは、過去にもバッハのややマイナーな幻想曲や組曲を収録したCDをいくつか出していましたが、このCDはブゾーニの編曲モノが集められています。その選曲がまた、シャコンヌやオルガン前奏曲とフーガ、コラール等の一般的な編曲ではなく、やはりマイナーな編曲が集められている点が彼らしいです。

まず、「前奏曲、フーガとアレグロ」は本来リュートのための曲とみなされていますが、そのままピアノで演奏することも可能です。原曲は短い前奏曲、中規模のフーガ、短いアレグロがそれぞれ独立した3曲としてまとめられていますが、ブゾーニは曲集の注釈の中で、フーガとアレグロをまとめて演奏することを提案しています。
Bach=Busoni/ Prelude, Fugue and Allegro BWV 998
(Bach=Busoni/ Prelude, Fugue and Allegro BWV 998)
この譜例はフーガとアレグロの移行部分。フーガの後半部で切れ目無くアレグロに移行し、アレグロの最後にフーガが厚くなって回帰するという構成で、聞いていても自然な流れになっています。つまり、「前奏曲とアレグロ付フーガ」になっているわけです。この編曲での録音は、今まではブゾーニの弟子のエゴン・ペトリによる古い録音がひとつあっただけでしたが、これでクリアなサウンドで聞けるようになったわけです。

次の「幻想曲、アダージョとフーガ」も、面白い構成の編曲です。原曲である幻想曲とフーガ BWV 906は、フーガが未完成だったこともあり一般的には幻想曲のみがよく演奏されますが、ブゾーニは未完のフーガを補筆(というか自分流に展開)させて、間にアダージョ BWV 968を挿入しています。このアダージョは無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番の第1楽章を、バッハ自身(偽作説もありますが)がチェンバロ用に編曲したものです。

もうひとつ紹介しておきたいのが、「前奏曲とフーガ、フーガと装飾」(私の勝手な直訳。原題はPreludio, fuga e fuga figurata)です。原曲は平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第5番の前奏曲とフーガ ニ長調で、ほぼそのまま前奏曲とフーガが演奏された後に、前奏曲の走句とフーガが同時に演奏されます。以下の譜例を見てください。
Busoni/ Preludio, fuga e fuga figurata
(Busoni/ Preludio, fuga e fuga figurata)

なんとうまいことを思いついたことでしょう。ブゾーニ版の平均律曲集には様々な練習のための変奏が掲載されており、このアイデアも載っています。後に、ブゾーニの曲集「若者のために」(An die Jugend)の中に収められました。

他の収録曲については、またいつか紹介します。


  • Preludio, fuga e allegro

  • Fantasia, adagio e fuga

  • Fantasia, fuga, andante e scherzo

  • Fantasia nach Bach

  • Preludio, fuga e fuga figurata

  • Fantasia in modo antico Op.33b No.4

  • Drei Albumblatter

  • 2007年09月12日

    リスト編曲の前奏曲とフーガ イ短調 BWV 543

    リスト編曲の前奏曲とフーガ イ短調 BWV 543は、数あるバッハのピアノ編曲の中でも相当有名な部類に入ると思います。情熱的な前奏曲と、均整がとれながらも盛り上がって終わるフーガがセットになっており、さらに比較的コンパクトにまとまっているためでしょうか、大変人気があります。リストの編曲集「6つのオルガン前奏曲とフーガ」の中でも、この曲だけが唯一多くのピアニストに取り上げられます。以下の譜例は前奏曲の冒頭部分です。

    Bach=Liszt/ Prelude and Fugue in A minor BWV 543
    (Bach=Liszt/ Prelude and Fugue in A minor BWV 543)

    リストの編曲は、楽譜上非常にシンプルで、ペダル指示はもとより表現記号はほとんど無いため、演奏者の解釈がとてもよく出ると思います。多くのCDが出ていますが、その中でもはっきりと性格付けがついているものを3点選んで紹介しようと思います。

    まずは以前も取り上げたワイセンベルクのCD「バッハ:主よ、人の望みの喜びよ」を。こちらはピアノならではの硬質な音で、迷いが無く決然とした演奏が聴けます。煌びやかな高音部、荘厳な重低音、ここぞとばかりに表出され聴いていてドラマを感じられる演奏です。ロマン派スタイルの演奏と言えるでしょう。

    次に紹介するケヴィン・オールドハム(Kevin Oldham)のCD「The Art Of Piano Transcription」では、うって変わってノンレガートを基本としており、あたかもクラヴィーア曲かのような端正な演奏が聴けます。原曲を知らなければ、元がオルガン曲とはわからないことでしょう。ダンパーペダルの使用も最小限にとどめているようです。

    最後に、サイのCD「シャコンヌ!~サイ・プレイズ・バッハ」です。こちらは、ワイセンベルグの解釈よりもさらに表情豊かに演奏されます。全体的にゆったりしていますが、途中でもテンポが大きく揺れ、ロマン派的なバッハが聴けます。盛り上がるところではペダルを最大限に使い轟音を鳴らします。オールドハムの演奏と比較すると、とても同じ曲とは思えません。


    ダイナミック&スピーディーなワイセンベルグの演奏、シンプル&端正なオールドハムの演奏、ゆったりとロマンチックなファジル・サイの演奏、聴き比べてみるとこんなに違う弾き方があるのかと、新たな発見があるのではないでしょうか。どのCDも比較的容易に入手可能です。


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    2007年09月14日

    トリオソナタ 第4番 BWV 528 第2楽章 「アンダンテ」

    先日の記事「Transcriptions by Ira Levin」で紹介したCDに収録されている、トリオソナタ 第4番 BWV 528 第2楽章 「アンダンテ」。この曲、とても渋い音楽ですが聴くうちに好きになってきました。以下の譜面はアンダンテの冒頭、オリジナルのオルガン譜です。ロ短調で、物憂げな4度進行の主題。そして次第に装飾されていきます。
    Bach/ Andante from Trio Sonata No.4 BWV 528

    この曲、ピアノで弾いてもよく響きます。ストラーダルによるピアノ編曲の譜面があるので、見てみましょう。以下の楽譜は、ストラーダル編の中間部。ゆったり歩む低音の上に、二つの装飾された下降メロディが美しく絡み合います。何と切ないメロディなことでしょう。

    Bach=Stradal/ Andante from Trio Sonata No.4 BWV 528
    (Bach=Stradal/ Andante from Trio Sonata No.4 BWV 528)

    ストラーダルの他の編曲は非常に音の数が多く、弾きこなすのは容易ではないですが、このアンダンテはとても弾きやすく、美しいのでお勧めです。

    この曲のピアノでの演奏は、以下のリンクのCDで聴けます。

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    2007年10月03日

    トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565 (1)

    トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565は、バッハの音楽のピアノ編曲を語る上で欠かすことはできません。あまりに有名すぎて、この曲を取り上げて記事を書くのは躊躇われます。明らかに1回の記事で想いのすべてを書ききることはできないと思いましたので、続編を思わせるタイトルにしました。

    原曲はオルガン曲。タララ~と始まる激しい下降音形と、続く大量の音と早急なパッセージとで情熱的なトッカータ。間にフーガが演奏され、最後にまた激しく盛り上がるという、後世の音楽家たちにとっても、ピアノの腕自慢として弾くのにもってこいの楽想。オリジナルの冒頭はこうなっています。

    Bach/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565
    (Bach/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565)


    さて、私が保有するこの曲のピアノ編曲版の楽譜は20種類を超えており、まだまだ他にもどんどん出てくる気がします。今日はその中から4つほど紹介します。まずは最も有名なブゾーニによる編曲。下の方でいろいろな編曲を紹介しますが、他の編曲はピアニスティックな派手な効果を狙おうと、色々な工夫(悪あがき?)をしているのに対して、ブゾーニ編がもっとも原曲の構成に忠実です。バッハの楽譜の通りのリズムで音を配置した上で、音を分厚くしたりペダル効果をめいいっぱい使った編曲です。

    Bach=Busoni/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565
    (Bach=Busoni/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565)

    一方で、この曲のピアノ編曲としては草分け的な存在なのが、タウジッヒによる編曲。出だしのトリル(A-B-A-B-A)が、現代の感覚では違和感がありますが、ブゾーニ編よりも派手で、時には原曲の音の形を変えて、ピアノならではの演奏効果を狙っています。

    Bach=Tausig/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565
    (Bach=Tausig/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565)

    なお、オーストラリアのピアニスト、グレインジャー(ブゾーニの弟子の一人)はブゾーニ編とタウジッヒ編の良いところを混ぜ合わせて演奏会で弾いていたようです。ハワードがその演奏をグレインジャー編として譜面に起こしており、数名のピアニストがCDに録音しています。私は、このグレインジャー編がピアノで弾いた際に最もバランスが良いと思っており、演奏会で何度か弾いたこともあります。

    続けて紹介する2曲は、比較的マイナーなものになりますが、冒頭の編曲手法の違いが如実に出ていることから紹介したいと思います。まずは、ピアニストとしては有名なコルトーによる編曲。コルトー編の楽譜は何度も店頭で見かけたことがあり、日本でも手に入りやすいものだと思います。冒頭のトリルからして、右手はA-A-Aのオクターブ移動、左手はA-G-A。下降音形も、3連符の連続。ペダル低音の上に乗る和音進行も分散和音化。冒頭部分だけを見ても、いろいろな工夫をしようとしています。

    Bach=Cortot/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565
    (Bach=Cortot/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565)

    次に、ストラーダルによる編曲。これまた重たい編曲で、すべてオクターブ和音で演奏されます。ペダル低音の上に乗る和音進行は、コルトー編よりもさらに派手に、広い音域のスケールで盛り上げています。続きもずっとこの調子で派手に展開されます。

    Bach=Stradal/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565
    (Bach=Stradal/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565)


    今日紹介したもののうち、ブゾーニ編、タウジッヒ編、グレインジャー編については以下に紹介するCDで聞くことができます。
    続きは、また別の日に書きます。


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    Busoni編

    Tausig編

    Grainger編


    2007年11月25日

    ウィーン旅行での収穫

    しばらく更新が滞ってしまいました。11/14~21まで、ザルツブルクとウィーンへ旅行に行ってきました。ウィーンでは、バッハというよりもモーツアルトやシュトラウスが中心でしたが、観光の合間に立ち寄った楽譜店にて、持っていなかったバッハ編曲モノの楽譜を3点ほど入手しました。小品を2曲、大曲を1曲。

    まずは、アレクサンドル・タロー編曲の「シチリアーノ(ヴィヴァルディの協奏曲のオルガン編曲より)」と「アンダンテ(原作者不明の協奏曲のクラヴィーア編曲より)」です。両曲ともにアレクサンドル・タローのCD「Concertos italiens 」に収録されているものです。

    Bach=Tharaud/ Sicilianne from Concerto nach Vivaldi d-moll  BWV 596
    (Bach=Tharaud/ Sicilianne from Concerto nach Vivaldi d-moll BWV 596)

    次に大曲の方は、ファジル・サイによる「パッサカリア ハ短調」の編曲。ただ分厚い和音だけでなく高音域をよく使ったピアニスティックな編曲になっています。

    Bach=Say/ Passacaglia c-moll  BWV 582
    (Bach=Say/ Passacaglia c-moll BWV 582)

    こちらは音源は出ていないものの、来日演奏会でも何度か演奏されており、私も王子ホールで聴きました。終演後のサイン会で私は「楽譜を出版するつもりがあるか?」という質問をしましたが、「もちろんそのつもりだ」という答えをもらっていました。SCHOTT社の「The Virtuoso Piano Transcription Series」の第12巻として今年出版されたばかりのようです。帰国後検索してみたところ、楽譜オンラインショップ di-arezzoでも入手できるようです。


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    2007年12月04日

    レスチェンコの弾くバッハ編曲

    ロシアの若手ピアニスト、ポリーナ・レスチェンコがバッハの編曲モノもいくつか録音しているため、紹介したいと思います。このピアニストは、かのアルゲリッチがお勧めの新鋭の一人で、過去にEMIからリリースされた「Bach/Brahms/Chopin: Piano Recital」というCDでこの人を知りました。リストとブラームスのパガニーニ変奏曲や、ショパンの華麗なるポロネーズなどの華やかな曲のなかで、落ち着いた佇まいのラルゴ(バッハ=フェインベルグ)が演奏されます。確か2003年の別府アルゲリッチ音楽祭でもこの曲が演奏され、さらに最近では2007年7月にすみだトリフォニーでも演奏されました。NHKの連載番組「ぴあのピア」でも放映されましたが、残念ながらこのラルゴは途中でカットされてしまっていました。このラルゴは私の最もお気に入りな曲の一つですが、しかし、レスチェンコのこの曲の演奏はあまり気に入りませんでした。独立した3声のメロディーのはずが、右手のメロディー+左手の伴奏みたいに聞こえてきてしまう演奏です。またいい気分で聴いている中で突然大音量の低音が鳴り響いたりするところもいただけません。

    一方で、以前の記事、リスト編曲の前奏曲とフーガ イ短調 BWV 543として、この曲についてのいろいろな解釈のCDを紹介しましたが、このレスチェンコの「Liszt Recital」(このアルバムはハイブリッド・タイプのSACDです)に収録された同曲の演奏は、最も過激な解釈でかつピアノ独特の良さが出ていると思います。度を越した自由な溜めや、踏みっぱなしにしたダンパーペダル。はじめてこの録音を聴いたときは相当びっくりしました。原曲を敢えて思い出さないように聴くこと(これが大切!)で、自然なピアノ曲として聴こえてきます。こんなリストの曲がありそうです。このCDではリストのソナタやファウスト・ワルツなども驚異的なテクニックで魅せます。前述のラルゴはイマイチでしたが、前奏曲とフーガ イ短調の演奏は一聴の価値アリです。今後他のバッハの超絶技巧編曲もぜひ手がけて欲しいものです。

    Liszt Recital収録曲目
    バッハ=リスト/前奏曲とフーガ イ短調
    バッハ=ブゾーニ/シャコンヌ
    ・グノー/リスト/歌劇『ファウスト』のワルツ
    ・リスト/ピアノ・ソナタ ロ短調

    Bach/Brahms/Chopin: Piano Recital収録曲目
    ・リスト/スペイン狂詩曲
    ・クライスラー=ラフマニノフ/愛の悲しみ
    ・ショパン/ロンド 作品16
    ・ブラームス/パガニーニ変奏曲
    バッハ=フェインベルグ/ラルゴ
    ・リスト/パガニーニ練習曲 第6番
    ・ショパン/アンダンテスピアナートと華麗なるポロネーズ

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    2008年03月03日

    Exquisite Rarities Of Piano Music

    久しぶりの更新になってしまいました。さてこのタイトル「Exquisite Rarities Of Piano Music」というCDを手に入れ、その内容が大変興味深いものでしたので紹介します。タイトルの通り、極めて珍しいピアノ音楽ということですが、その中にバッハのピアノ編曲も収録されていました。カバレフスキー編曲のトリオソナタ 第2番 ハ短調です。CDのジャケットはこちら。
    Exquisite Rarities Of Piano Music
    Amazon等メジャーな通販サイトでは見かけませんが、Briosoというサイトで購入できます。注文するとCEOの丁寧なメッセージ付でCDが送られてきました。

    さて、カバレフスキー編曲のトリオソナタ 第2番 ハ短調、これが非常に優れたピアノ編曲です。煌びやかな高音部、色彩感豊かな中音部、効果的な低音。ブゾーニのバッハの編曲、特にオルガン曲の編曲は、オルガンの重厚な響きとその音楽の本質をピアノで効果的に再現することに成功していると思いますが、一方でカバレフスキーのこの編曲はオルガンの響きを再現するのではなく、原曲の音楽素材をもとに効果的なピアノ曲として生まれ変わっていると思います。このような感想を持つ素晴らしい編曲は、他にはフェインベルグ編曲のラルゴが挙げられます。ぜひこういう曲は広く世に出回って欲しいものです。

    <収録曲>
    BR143 - Exquisite Rarities Of Piano Music
    Rachmaninoff, Bach, Schubert, Mozart, and more
    Tobias Bigger, piano

    1. Rachmaninoff/ Polka de WR
    2. Scarlatti=Granados/ Sonata in a, L 469
    3. Brahms=Bigger/ Waltz op. 65a No. 3
    4. Bach=Warren/ Aria "If Thou Art Near", BMV 508
    5. Severac/ "Les Muletiers" from Suite "Cerdana"
    6. Tchaikovsky=Wild/ "At the Ball" Op. 38, No. 3
    7. Bach=Kabalevsky/ Sonata for Organ, BWV 526, Allegro
    8. Bach=Kabalevsky/ Sonata for Organ, BWV 526, Largo
    9. Bach=Kabalevsky/ Sonata for Organ, BWV 526, Allegro vivace
    10. Faure=Cartot/ Berceuse from Suite "Dolly" op. 56
    11. Medtner/ Dithyrambe op. 10, No. 1
    12. Schoeck=Bigger/ Lullaby
    13. Purcell=Stevenson/ Hornpipe
    14. Schubert=Godowsky/ "Good Night" from "Winterreise", D 911
    15. Mozart=Stradal/ Minuet from Symphony No. 40
    16. Foster=Warren/ "Beautiful Dreamer"
    17. Brahms=Cziffra/ Hungarian Dance No. 9
    18. Handel=Wild/ Aria and Variations ("Harmonious Blacks,ith")

    2008年03月09日

    リフシッツのピアノで弾く「音楽のささげもの」

    先月末に発売されたばかりのCD、「Bach: Musikalisches Opfer」がなかなか面白い内容でしたので紹介します。
    バッハの作品の中で謎かけの多い「音楽のささげもの BWV1079」の中から、3声・6声のリチェルカーレ、カノン、トリオソナタをコンスタンチン・リフシッツ(Konstantin Lifschitz, 1978-)のピアノ演奏で聞くことができます。3声・6声のリチェルカーレはピアノでも演奏できるのでニコラーエワをはじめいくつかの録音で聴くことができますが、種々のカノンやトリオソナタを含めてピアノで演奏しているのはこれが初めてではないでしょうか?(もし他にピアノで演奏している録音があれば教えてください)

    それにしてもトリオソナタはどうやって一人で弾いているのか?と思い注意深く聴いてみると、どうやら多重録音で一人で二台ピアノ(連弾?)の演奏としているように思われます。CDのライナーノーツにも特にそういった記述は見当たらなかったので、どの曲がソロで弾いていてどの曲が多重録音なのかよくわからないのですが・・・ピアノの音色が好きな私としては、たとえ多重録音であったとしても、「音楽のささげもの」がピアノの響きで聴くことができるというこのCDの意義は非常に大きいものです。

    なおこのCDには、他には前奏曲とフーガ 変ホ長調 BWV 552と、フレスコバルディの3つのトッカータの録音も収められています。

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    2008年04月15日

    アムランの弾く「バッハによる幻想曲」

    今回はブゾーニの名作「バッハの主題による幻想曲」と、それが収録されたCDの紹介です。原題 "Fantasia nach J. S. Bach" と題されたこの曲は、1909年、彼の父の死に際して3日間で書かれた曲で、静かで瞑想的な土台の上に、力強くバッハのコラールが歌われます。この曲は、編曲というよりも「バッハの音楽をモチーフに作曲されたピアノ曲」という分類になると思います。引用しているのは以下のバッハのオルガンコラールです。

    ・コラールパルティータ 「キリストよ、汝真昼の光」 BWV 766
    ・コラール「神の子は来たりたまえり」 BWV 703

    ブゾーニのゆるやかに流れるような瞑想的なファンタジアで始まり、へ短調で物憂げなコラールのテーマによるコラールパルティータ 「キリストよ、汝真昼の光」 BWV 766 が現れます。いくつかの変奏が盛り込まれ、途中でヘ長調のコラール「神の子は来たりたまえり」BWV 703 が導入されると曲は輝かしく喜びに満ちた音楽に変わっていきますが、その後もヘ短調のコラール変奏は何度も再現され、終結部に向かって静かに安らかな眠りへと誘う、そんな音楽です。

    さてこの曲の素晴らしさを最もよく伝えてくれている演奏として、アムランのCD「The Composer Pianists」を挙げたいと思います。ブゾーニの比較的有名な曲だけに、録音も多く残されていますが、私はこのアムランの演奏を凌ぐものをは未だ無いと思ってます(下で挙げるペトリを除いて)。

    なお、この曲の初演を果たしたブゾーニの高弟、ペトリの録音「Busoni: Complete Recordings 」も大変素晴らしいです。クリアなサウンドで聴けたら文句なしなのですが。

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    Hamelinの演奏

    Petriの演奏


    2008年04月27日

    『音楽の玉手箱~露西亜秘曲集~』より

    最近入手した有森博 氏のCD、「音楽の玉手箱~露西亜秘曲集~ 」がとても良く、また面白かったので紹介したいと思います。CDの内容はロシアの知られざる佳曲を選りすぐって収録しているもので、聴いたことのある曲から初めて聴く曲まで、民族色の強い曲などもあり大変楽しめます。曲目はAmazonのリンクをご参照ください。

    これらの収録曲の中にバッハのピアノ編曲、G線上のアリアが収録されており、それがまた秀逸。ニコライ・ヴィゴードスキー(Nikolai Wigodsky, 1900-1939)による編曲で、楽譜は見たことがあったものの今までほとんど情報がありませんでした。これがプロの演奏で聴けるとは思ってもいませんでした。楽譜は3段(高音・中音・低音部)になっていますが、ちょうど二本の手で弾けるように編曲されており、かつ声部が見やすくなっています。以下の楽譜はその冒頭部分です。
    Bach=Wigodsky/ Air from Orchestral Suite No.3 BWV 1068

    興味深いのは、前半・後半ともに繰り返し部分でメロディーラインが中音部に現れるのです。
    A - A' - B - B' と表記すると、A'とB'のメロディーを中音部で演奏しており、この部分の響きがとても新鮮で、ありがちな編曲と一線を画しています。(さらなるアレンジとして、A - A' - B' - B と演奏するのも良いかなと思いました)
    Bach=Wigodsky/ Air from Orchestral Suite No.3 BWV 1068

    ライナーノーツにもチェロによる響きをイメージさせると書いてありましたが、確かにその通りで、例えばカザルスやヨーヨーマがチェロで弾いた演奏がありますが、それと似た感じになります。そして何より、この有森氏の演奏が素晴らしいです。譜例を出して言葉で説明するのは易しいですが、これを確かに演奏するためには繊細なコントロールが必要でしょう。静かに聴き入ってしまう名演です。

    何にせよ、このCDには大変楽しませてもらいました。


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